痴漢の話をする

http://anond.hatelabo.jp/20150109211441
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を読んで思った事、思い出した事を書いておく。あ、私の性別は男である。

その時の状況

16・7才の頃だと思うが、正確には覚えていない。朝のラッシュ時である。
ドア際のキープに定評のある私は、その日も終着駅一つ手前の急行の停車駅で乗り換え客が降車する流れに逆らわずに一旦降車、再度乗車の際には乗客の最後尾につけドア際をキープした、かどうかは正直よく記憶していない。覚えているのは、当時自分がドア際に立つのを好んでいた事。そしてその時もラッシュでドアにへばりつかされるように立っていた事である。
最初その感覚に気付いた時、私はそれが意図的なものなのかどうか分からなかった。というのも、その痴漢(であったか女であったかは知らないが)は私の股間…というか玉袋を下方から包むように触っていたんだが、その触り方が極めてソフトで触ってんだか触ってないんだかよく分からんくらいなのである。
だから「最初にその感覚に気付いた時」と書いたけど、実の所は電車が終点に着き降車してしばらくするまで、私にはその判断が付かなかったのである。電車を降りた後--あれは確かに手の平の感触で、荷物が当たってたとかいうわけではなく、そしてあのなで回すような動きが意図的ではない、なんて事は有り得ない--と、やっと確信したのだった。
というわけで、電車に乗って玉袋をやんわりなで回されている間の私の思考は
1.え、これ痴漢? 触ってる?
2.混んでるし当たっちゃってるんか?
3.いやいや、この角度、この感触、有り得んでしょ。
4.マジマジ? え、何これ? 男? 女? つーか、え? 何で?
5.文句言うか。え、何て言えばいいんだ? つーか--(1.に戻る
といった辺りの所を全力で2・30ループくらいしていた。混乱していたし、恐怖も感じていた。振り向いて犯人の顔を確認する事はできなかった。

その時とかその後に思った事

この恐怖の感覚は、それまで感じた事のないものだしちょっと説明が難しい。フィクションで近い感覚を例えるなら『GANTZ』の「星人」にばったり出くわしちゃった感じ(強そうなやつらじゃなくて、最初の方に出てきたネギ星人とかの方が近い)。自分と自分の周りを安定的に構成していた意味の体系に、あさっての方向からチョップを食らわされた感覚というか。
前述の混乱状態のせいか、(普通の男の代表としてではなく)私は、性的な感情は--快感も嫌悪感も屈辱感も--微塵も呼び起こされなかった。ただ、ただ、「え、何これ、何これーーー?」という世界観の危機だけがあった。と、今では思うのだが、一方で私はプンスカ怒っていた記憶もある。しかしあれは、性的な屈辱感というより何かもっと個人的な怒りだったように思う。

その後

その日友人に会うと、私はこの不思議な恐怖とやり場のない怒りを伝えるべく、直ちに事の次第を話したと思う。友人達がどういう反応をしたかは覚えていない。今にして思うと、そんな事聞かされても困るよな。しかし、その反応で特に傷ついた覚えもないので、友人達は私の体験をそれなりに興味を持った様子で聞いてくれてたんではないかと思う。
あるいは、その日私は話さなかったのかも知れない。が、特に隠すべき事だと思っていなかった事は確実で、その後何かの折に痴漢の話題になるとこの体験を語っていた記憶がある。電車通いが多かったその場所で、割と明け透けにそういう話をしてたんだが、容姿とか体重とかに関係なく、痴漢にあった事が無いという女友達はいなかったなあ…。

増田を読んで

実際にやられた事もその後の心持ちも、この増田に比べて私は随分マイルドだったので、そのほかの部分については「大変だったねえ…」としか書ける言葉が無いのだが、

犯人は怖かったが、その怖さはヤクザが怖いっていうより宇宙人が怖いって感じだった。理解できない、異質なものに対する恐怖と言うのが近い(念のため言っておくが自分が異性愛者で相手が同性愛者だからではない)。捕まえるなんてとんでもなく、とにかく関わりたくなかった。

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そう、これ、この感覚。と言えるほど同じものを感じてたのかは分からないが、この部分を読んで久しぶりにあの感覚を思い出した。

んで、こっち。
「普通の男」とか妙な断定とか「釣りか?」と思わせる要素が多々あるんだが、

ホモに股間を握られたが逆に強く握り返して悶絶させたとか、抱きついてきたやつを投げ飛ばしたとかそんな感じだ。酒の席で笑って話せるネタだ。

それに、もし俺がホモに痴漢されたとしても腕を掴んで睨み返すし平気で警察につき出すと思う。キモい!嫌だ!死ね!とは思うが怖いとは思わない。

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この部分は妙に真に迫ってるというかリアルに感じるんだよな(いやまあ、友人君達、話盛ってない? とは思うけど)。と言うのは「平気で警察につき出すと思う」と自身の行動を予想はするんだが、友人達の武勇伝の中には「警察につき出した」というものが無い。これ、いかに「触った、触らない」を出るとこに出て決着をつける事に抵抗があるかを暗に示してるよね。向こう見ずでヤンチャな男子高生でも、自身の被害を警察に訴えないという事実は、痴漢被害の暗数を想像する際に想起すべきだろう。
それと、この増田の言う「ホモの気質が無い男」が「普通の男」だとしたらさあ、なんで増田の友人は複数被害を受けてるんだろうね、とは思う。だって「普通の男子高生」ってのは定義からして男子高生として多数派なわけだよね。で、それに手を出したら痛い目にあうと分かってたら、そんなのに近づかんよね普通。もちろん、この増田友人達に手を出した痴漢はいずれもそれが初陣だったという可能性も無いわけではないけど、普通に考えると痴漢にとってはこの増田グループこそが地雷・イレギュラーなんであって「普通の男」は痴漢に対して宇宙人の恐怖を感じるのかも知れんよね。